なぜ人は人を殺すのか。
告白/町田康
告白のあらすじ
明治26年に実際に起こった幼い子供、赤ん坊まで殺した大量殺人事件、
『河内十人斬り』事件。
その実行犯、戸城熊太郎の一生を描く。
少し人より不器用で小心者な少年、熊太郎。
そんな少年がなぜのちに歴史に残る河内十人斬りを起こしてしまったのか。
熊太郎を兄貴と慕う舎弟の弥五郎、村一番の美人の内縁の妻、
熊太郎を陥れお金を騙し取る村の人間、妻と密通していた男。
さまざまな思惑が交差し、熊太郎は弥五郎とともに歴史に名が残るような大事件を起こすことになる。
告白の感想
河内十人斬りをテーマにしたお話。
文庫本で800ページを超える長編小説。
テーマ自体は重く、暗いが、語りが軽くユーモアもあってリズムよく読み進めることができた。
熊太郎が劣等感に苦しむシーン、お金を騙し取られるシーンなどには本当に胸が痛んだ。それくらい感情移入してしまうのである。
江戸時代から明治初期頃の物語だが熊太郎の自意識が高く思弁的な悩みは、現代の若者に通じる悩みだと思う。
主人公に幸せになってほしいと願うのだが、物語が進むにつれ、どんどんドツボにハマってゆく…
最後の主人公の最後の一言が哀しく、重い。心を揺さぶれられました。
このセリフにこの物語の全てが込められているように思います。
すごくおススメです。長いお話だったけどこの本に出会えてよかった。